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わたしのお宝レコード 

不定期で、キタガワレコードの会員様から寄せられた『私のお宝レコード』をご紹介しております。
記念すべき第1回目は、所持者のその後の人生を決定付けた或るレコードにまつわるエピソードです。

第1回目 野菊の墓/梶光夫・高田美和 コロムビア SAS−772

私は現在国語の教員をしています。私が中学だった昭和42年ごろ、ふとレコード店に立ち寄り、一枚のレコードが目に留まりました。それはコロムビアの「野菊の墓」というシングル盤でした。伊藤左千夫の『野菊の墓』という小説を読みたく思ったものもちょうどこの頃でした。私はすぐさまこのレコードを購入し、早速聴いてみました。文芸作品を基に作詞・作曲された青春叙情歌謡に私は感激しました。それからまもなく政夫と民子の純愛を描いた小説を読みました。レコードを聴きながら頭に描いた情景が見事に描写されていました。B面は「たけくらべ」でした。樋口一葉の同名の小説から作られた歌謡曲でした。こちらの曲にも言い知れぬ感銘を覚えました。その後、この小説を探し、耽読(たんどく)したことを覚えています。 淡い恋に目覚める少年少女の姿と明治の下町情緒が詩情豊かな典雅な文章で描かれていました。

レコードをたくさん収集している友人がいて、このレコードを持って遊びに行ったことがあります。彼も同じレコードを既に持っていました。そのとき友人に聴かせてもらったレコードが一枚あります。安達明さんの「夕顔の人」でした。歌詞を書き写したノートが今も残っていますが、その後この曲を聴いたことは一度もありまでん。高校に入学して、源氏物語五十四帖の注釈を手がかりに読破できたものもこのレコードのおかげです。

物怪(もののけ)に襲われ、あえなく急死した薄幸の美女夕顔のことが強く印象に残りました。誰かこのレコードを譲って下さる方はいないでしょうか。高値で購入する所存です。このようにレコードを聴いたことが、私の将来を決定づけ、大学の国文学科を卒業し、現在に至っています。                                                      Yさん